銀座大幸歯科-東京都のインプラント歯科医院・セラミックス・CTスキャン

身体表現性障害（ Somatoform Disorders ）

“身体表現性障害（Somatoform Disorders ）”とは、“身体化”症状を訴えの中心とした疾患である。“身体化”症状とは，適切な検査を行ってもその症状をうまく説明できない身体症状（訴え）であります。具体的には、胃カメラなどでの検査上は正常であるのに、食欲もなく胃の不快感が続くといったようなものであります。歯科領域では、症状を狭義の“身体化”は心理的な因子（ストレスや心的葛藤）が背景にあって起こる身体症状を指しますが、広義には心理的な因子によらなくとも“身体化”といいます。
　以前、総入れ歯の患者様で、本人に確認していただき入念に確認をした上で歯並びを決定したのにもかかわらず、次の予約の時には全く別の歯並びを希望されることがあります。
　何度も何度も義歯を作り直し、結局「治療する前に使っていた入れ歯のほうが良かった」という場合があります。本人の希望通りに歯を並べると、審美的・機能的に逸脱したものになってしまい、とても使い物になりません。どんなに完璧な入れ歯を作ったとしても、本人が受け入れることができない身体化症状があれば、どんなに上手な歯科医でも、治療は上手く行きません。
　また、大うつ病性障害（うつ病）やパニック障害などの不安障害においても、身体化症状を認めることが多いので、区別する必要があります。しかし、身体表現性障害では、大うつ病性障害や不安障害と異なり、通常は病的な抑うつや不安を認めません。
　身体表現性障害の患者は主訴が身体的なものであるため、精神科医を訪れることは皆無に近く、通常はプライマリーケア医を受診することが多い。また、身体化症状の出現部位によって、あらゆる診療科を受診する可能性があります（もちろん歯科・口腔外科を受診することもある）。一般医療機関（内科など）を受診する患者の３０％程度が，身体表現性障害であるといわれている。検査によって原因が見いだせないために、ドクターショッピングをくり返すことも稀ではありません。かつては、自律神経失調症、不定愁訴、更年期障害、ヒステリー、心因性疼痛、慢性疼痛、慢性疲労症候群、○○神経症（咽頭神経症や胃神経症など）などと診断されていた疾患の多くが、現在では身体表現性障害であったと考えられています。歯科・口腔外科領域においては、口腔内の違和感や顎関節症、舌痛症、義歯ノイローゼ等の多くが、身体表現性障害と診断されると考えられます。
　 DSM-IV （米国精神医学会作成「精神疾患の診断・統計マニュアル第4版」）によれば、身体表現性障害は、身体化障害、鑑別不能型身体表現性障害、転換性障害、疼痛性障害、心気症、身体醜形障害、特定不能の身体表現性障害などに下位分類される。
　身体表現性障害の治療には、確立されたものがない。心理社会的アプローチとしては、患者様が自分自身で症状をコントロールできるように援助をするというスタンスをとるべきである。生物学的アプローチ（薬物療法）としては，穏やかな作用の薬剤を心理社会的アプローチの補助として用いるべきである。

身体表現性障害の治療の原則8か条

・	“治癒”を過度に期待しないこと。生まれつき完璧にバランスのとれた噛みあわせの確立は０％です。
・	患者様が症状をコントロールできるように援助するように心掛けること。
・	患者様との面接は短時間で頻回でもかまわないが、必ず定期的な予約とすること。
・	薬剤は穏やかな作用のもの（抗ヒスタミン薬，ビタミン剤，漢方薬など）を中心に用いること。
・	不安が強いときなどの一部の例外をのぞいて、向精神薬（ベンゾジアゼピン系抗不安薬）を用いないこと（薬物嗜癖に陥る可能性がある）。
・	患者様自身がストレスを自覚することを手伝うこと。
・	ただし、治療同盟を築くまでは安易にストレスと症状とを結びつけないこと。
・	家族との治療協力を得ること。また、治療を妨げるような敵意（家族，親類，テレビのワイドショー、他の医療関係者）に巻き込まれないように助言すること。

　噛みあわせを得意としている歯科医の中には、「どんな顎関節症でも治せる。」「治療の質が悪いから顎関節症になる。」と豪語し、独自の呪い的な治療をして、自己満足している場合があります。
確かに歯科医の治療が問題で顎関節症になることもありますが、歯科的に何も問題がない人が口腔内の違和感、顎関節症などを訴えるケースが多くなってきています。
　常日頃、身体表現性障害を起こしている患者様に接していてお話しをするのですが、「この病気は何か没頭するような趣味、目的意識のない方は絶対に治りません。必ず趣味を持ち、人生を楽しんでください。」と、話しています。そして、ストレスを自覚してもらい、自身をつけていけば必ず良い結果となることも、お話しています。